路地状敷地のタウンハウス計画 − 東京都新宿区西早稲田

路地状敷地の建築制限

 幅員の狭い私道のつきあたりや、細長い敷地延長の奥に広がる敷地には、共同住宅などの特殊建築物の計画は制限されます。
 特に東京都は厳しく制限をしています。都内のこのような敷地にはアパートも賃貸マンションも計画できません。
 しかし長屋なら建築できます。建築基準法では、長屋は共同住宅ではありません。
 長屋とは、建築物の共用通路など共用部を一切通らず、道路から敷地内の通路を経由して直接各住戸の玄関に到達する形式の集合住宅をいいます。

 この敷地はまさに路地状敷地で、しかも私道の幅員は2m50p程度。共同住宅は絶対に計画できませんし、だいたい建築工事ができるのか悩みました。

 このような敷地に集合住宅を建てようとすると、よく見られるのが、右の写真のような「重層長屋」と呼ばれるものです。
 各ハウジングメーカーが用意している型式です
 施主はハウジングメーカーが提案したこのような計画を嫌い、不動産関係者の知人に相談しました。そしてその知人が私たちの知人でもありました。
 私たちが提案したのは、地下1階・地上2階建てRC造の7つの住戸が並ぶ「タウンハウス」です。計画には相当な困難が予想されましたが法規上、理論的には計画が可能です。しかし、予想以上に大変でした。

 私道のつきあたりから奥に、約550uの敷地が広がります。
 早稲田は起伏が激しい地域です。この敷地に隣接する敷地は、すべてこの敷地よりも高い位置にあります。本来ならヨウ壁を造らなければいけません。 しかし、この面積の土地にヨウ壁を造ると開発行為になります。路地状のこの敷地では開発が許可されません。

 そこで、地下室のドライエリアの壁を建築物の一部とすることで、建築工事に伴う土地の形質の変更としました。1m以上の盛土や切土もしないという条件のもとでの設計です。これで開発行為にはなりません。
開発行為に当たらないように、そして長屋の条件を全て満たすように計画を進め、懸念される事項を一つ一つ役所と折衝をし、説得をしました。
 そして無事に確認はおりました。しかし、この難しい計画を施工する会社を探すのに苦労しました。
 幅員が2m50p程度しかない長い私道の奥に、RC造の地下1階・地上2階建ての建築工事です。もちろん私道に接道する近隣の方々にはご協力をお願いしました。塀が損傷した場合の復旧と、工事車両が乗り上げてしまう隣接する敷地のカーポートからエントランスにかけては、工事終了後にデザイン性の高い舗装工事をお約束しました。

 そして手を揚げてくれたのは、規模は小さいですが老舗の工務店、今井建設というところでした。現在は上場企業のライト工業に吸収合併されました。
 とても優秀でまじめに仕事に取り組む会社です。
 きれいに舗装を直した私道の奥に、7住戸が並ぶタウンハウス「セプテット西早稲田」が完成しました。「セプテット」とは「七重奏」のことです。

 ちなみに、塀の損傷はありませんでした。初めは苦労をした工事車両の敷地内への乗り入れも、慣れというのはすごいものです。4トンコンクリートミキサー車もスイスイ(?)入っていました。